意外と厄介な、キャンピングカーの合鍵作り

アミティを新車で購入して2024年8月で丸5年になります。
しばらく前からエントランスの鍵の調子が悪く、施錠時も解錠時もキーの回りが非常に悪くなってきました。
詳しい症状としては、すんなりと回るときもあるのですが、何かに引っかかった感じになって全く回らなくなってしまうのです。
エントランスには2つの鍵が付いていますが、どちらを回しても同じような症状で、例えばすんなりと回ったり回らなかったりしたり、一方が回らない場合は別のもう一つの鍵にキーを挿してカチャカチャすると回ったりして、その症状が左右どちらでも同じように不規則に発生します。
もし出先で完全に開かなくなると本当に困ってしまいます。

こんな場合、手っ取り早く試せることのひとつとして思いつくのが注油です。
ただ、鍵の部分(特にシリンダー部)は一般的な油を使うと、その油が埃を寄せ付けるため余計に症状が悪化すると言う事を聞いていたので、ホームセンターで鍵専用の潤滑油(ちょっと高いんです)を購入して、まずシリンダー内部に注油、つぎにエントランスドアー鍵取り付け部の蓋を開け可動部全てに注油しましたが、全く解決しませんでした。
動きが重いわけではなく、引っかかりを感じるので注油で解決しないことはある程度想定していました。

キャンピングカーって、使われている細かな部品の多くは海外製の物が多く、過去にも何度か破損して交換した物もあったので、今回も鍵を構成している部品の一部が劣化もしくは破損して調子が悪くなってきたのだろうと考えていました。
しかし、キャンピングカーの部品って高額な割に本当に耐久性がないですよね。
流通量の少なさや輸入品であることを考えても価格設定はかなり高い様に思えます。

さて、鍵が壊れてしまった以上、次に考えるのは交換です。
色々調べてみたところ、実に多くの種類が存在し価格も様々、今流行のパスワード入力やボタンひとつで解錠できる物も良いと思ったのですが、色々調べると便利な反面、意外と故障も多い様ですし結構なお値段。
アミティに使えそうな物は、現在と同じ仕様でも26,000円程となかなかの金額です。

そうこうしているうちに、キャンピングカー仲間のオフ会があり、そのメンバーの中にキャンピングカーの修理を仕事とする人がいたので相談したところ「鍵の故障じゃなくて、鍵山がすり減ってきてるんじゃないの?」と言います。
キャンピングカーを購入してまだ5年、しかも家の鍵のように毎日使うわけではないのでさすがにそれはないんじゃないかと思っていただけに、鍵山のすり減りは全く疑っていませんでした。

そこで、殆ど使っていない愛妻が持っている鍵と見比べたところ、まるで別物ではないかと思うくらいに私のキーはすり減っているではありませんか!
で、愛妻のキーを使ってみると全く問題なく快適に施錠、解錠ができます。
原因は私が使っていたキーの消耗でした。

左が使い込んだキー、右があまり使っていないキー

解決策は鍵山がしっかりした合鍵を作れば良いと言う事になります。
アミティのエントランスに使われている鍵は明らかに海外製で一般的ではないので、ホームセンターや鍵屋さんでは恐らく在庫がなく合鍵は出来ないと思い、「キャンピングカーエントランス合鍵」で検索したところ、鍵山が無いブランクキーを取り扱ってるサイトを発見しました。
しかしそのサイトで合鍵を作ってくれるわけではなく、あくまでもブランクキーのみの提供のようです。

アミティのキーには「TRI/MARK」と書かれているので、同じ物を探したところ、ブランクキー1本1,100円(税込み)で見つかりました。ホームセンターでは作業工賃も含めて1本1,000円前後で合鍵を作って貰えるので高いなあと思いつつも2本購入、送料が宅急便での発送のみで1,210円。
2本で送料込み3,410円の出費。それでも鍵そのものの交換より費用と手間がかなり抑えられるのでラッキーだと思ったのですが、合鍵作りはそう簡単にいきませんでした。

入手したブランクキー

ブランクキーが手に入ったので、あとはホームセンターなどでマスターキーを元に鍵山を刻んでもらえば良いと思っていたのですが、鍵屋さんが入っているホームセンターやスーパーマーケットを何件回っても断られます。
一般的な合鍵作りと同じく、マスターキーを元にブランクキーに機械で山を刻むだけなのにです。

1件目は「ブランクキーからは作れません」の一点張りで理由すら教えてくれません。

2件目「持ち込みはやっていないんです」なに?その理由?

3件目「うちで扱っている物しか作れません」

4件目「見たことがない珍しい鍵でも作ります」と言う触れ込みだったので、かなり期待して行ったのですが「会社指定以外のキーを削ると、時として機械の刃が欠けてしまい、それの交換費用だけで3万円以上かかってしまうのでお断りしているんです」と丁寧に断りの理由を説明してくれました。

今回複数の店舗を回ってわかったのですが、ホームセンターや大手スーパーなどに入っている合鍵を作るテナントの殆どはチェーン店の様で、その本部のルールに則って営業しているようです。
今までホームセンターなどで合鍵を作っている所を見ていると、専用の機械でなんだか簡単そうにチョチョイのチョイと作っているように見えたのですが、そんな単純な話しではありませんでした。
極端な言い方をするなら、チェーン店は決まった範囲(在庫しているブランクキー限定で合鍵を作る)でしか作業をする必要が無いためマニュアル化することが可能。だからこそ技術や高い経験値がなくても合鍵を安価に作ることが出来るのかもしれません

そこで、今度は個人営業の鍵屋さんを探してみます。
「多くの鍵屋さんで断られましたがここでは快く引き受けてくれ、無事に合鍵が作れました」
との口コミがある店舗へブランクキーの持ち込みで作ってもらえるか電話したところ、非常にぶっきらぼうな言い回しで「まあ、作ってあげるよ」みたいな感じでした。
で、時間を約束して訪問したところ、ご高齢のご主人に小さな作業小屋へ案内され、キーを見せたところ開口一番「他の鍵屋で断られただろ、これは普通はやってくれないぞ」と。
「できますか?」の問いに
「何とかするよ」と
色々ブツブツ独り言を言いながらも何度もノギスで寸法を測ったりヤスリがけをしたり、想像と違って黙々と手の込んだ作業をしてくれます。

作業をしながら「このキーは材質が固くて下手すると機械の刃が欠けるから、ホームセンターなんかではやりたがらないんだよ」と説明してくれ、そうこうしているうちに1本が出来上がりました。
アミティで来ていたので早速試したところバッチリです!
2本目はあっという間に出来上がりました。
もう、惚れ惚れするような職人技です。

作業中に色々話しを聞かせてくれたのですが、ご主人はこの道40年以上の大ベテランで、出張作業がメインだけど普通に合鍵はもちろん、外車の合鍵や普通はやらない鍵に合わせて元々無かった新たな溝を掘ったりする特殊な作業、そして金庫の解錠もやっているそうです。
その腕を頼りに遠方から尋ねてくるお客さんもいるそうです。
センサー式の車の鍵(イモビライザー)以外はほぼ全て合鍵製作や解錠できると言います。
100万円超えの機械を導入すればイモビライザーも対応できるけど、年齢を考えると投資した費用を回収できないからやっていないとのこと。

最後に「このあまり使っていないマスターキーは保管しておいて合鍵を使っていけば良いですね」って尋ねると、鍵は基本的にマスターキーを使ってくださいと
「でも、そうすると複製した合鍵からは正しい鍵が作れなくなるんじゃないですか?」と突っ込んで尋ねると
「うちなら出来ます」と頼もしい回答。
あと、使っている鍵を長く使いたいなら、キーはできるだけまっすぐにやさしくゆっくりと抜き差しすると良いと言うアドバイスもいただきました。

近所にこんな職人さんがいることにビックリしました。考えてみれば、ぶっきらぼうな応対も、職人気質から来る物なのかもしれませんし、ぶっきらぼうだけど全ての会話は自信に満ちあふれ、嫌な感じは一切ありませんでした。
お元気でいつまでもこのお仕事を続けてほしいと切に思いました。

作業工賃は1本2,000円、2本で4,000円でブランクキーとその送料を合わせて7,410円の出費。
1本当たり3,705円のスペアキーとなりましたが、丁寧な作業を見せていただいた限り、作業工賃に関して言えば決して高いとは思いませんでした。

何はともあれ、エントランスの合鍵が無事に作れてほっとしました。


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