甘く見てはダメ!アウトドアの敵ブユ(ブヨ、ブト)

清流に潜む、本気でヤバい毒虫ブユ

キャンピングカーやキャンプの醍醐味はなんと言っても大自然の中での非日常の生活です。
しかし、大自然の中には市街地では見られないような生物がたくさんいます。
熊などに代表される人を襲う哺乳類。
噛まれると死に至ることもある毒蛇などの爬虫類。
そして、大自然の中でしか見られない噛まれると大変なことになりがちなブユ。

ブユに噛まれると大変

今回はブユの怖さと注意点を私の体験を交えて書きたいと思います。
ブユは地方によってブヨやブトなどと呼ばれているようですが、正式名称はブユだそうなので、ここではブユで統一します。
ブユは3〜5ミリほどの丸みを帯びたハエに似た昆虫で、被害は3月〜9月頃に多く見られるようです。
水がきれいな場所でしか繁殖出来ないため、キャンパーが大好きな自然豊かな場所は注意が必要ですし、活発な時期も多くのキャンパーが活躍する時期と重なりますね。
羽音がしないのでそばに寄ってきてもなかなか気づくことが出来ないようです。

ブユは蚊と同じ吸血昆虫ですが、皮膚を刺して吸血する蚊と違い皮膚を噛み切って吸血するので、被害に遭った箇所から軽い流血が見られる場合もあります。
一番注意しなくてはいけないのが、吸血時に注入される毒素が蚊やアブと比べ格段に強い毒性を持つことです。

スズメバチのように刺されると死に至るようなことは無いようですが、噛まれた後の痒みや腫れ、そしてそれらに悩まされる期間が尋常ではありません。
噛まれた時はそれほどでもありませんが、翌日あたりから猛烈な痒みが襲ってきます。
それと同時に、噛まれた場所は熱を持ち、固く赤く大きく腫れ上がります。
猛烈な痒みは通常のかゆみ止めは全くと言って良いくらい効きません。
痒みが治まるまで早くて1〜2週間ほどかかるようですが、体質によってはそれ以上かかります。

私の場合、もともと喘息や花粉症を持つアレルギー体質ですが、それ以外では特に強いアレルギー症状が出たことはありません。
それなのに4年前に噛まれたうちの数カ所がいまだに痒みが残っています。
また、何らかのきっかけで(何がきっかけかわからないのですが)噛まれた場所が再び腫れ上がり激しい痒みがぶり返すときもあります。(これは数時間で収まります)

私は30年ほど前に夏の新潟の山中で1カ所ブユに噛まれた事はあるのですが、そのときは1週間ほどで完治したので痒みこそ強いものの、それほどヤバい虫だとは思っていなかったのです。
それ以降、ブユと遭遇していないので存在は完全に忘れていました。

4年後もブユによる痒みが残る

4年前のことです。雨がしとしと降る岡山県の「休暇村蒜山高原キャンプ場」でキャンプしたときです。
キャンプ場の受付には「ブユに注意するように」との張り紙はありました。
夕方に半袖に短パン姿で楽しんでいた焚き火と調理の終盤、自分の足に異変を感じました。
両足の足首からすねにかけて20カ所ほど赤く血が滲んでいるのです。
その時は特に痛みも痒みも感じていなかったので、たき火で爆ぜた火の粉でも当たって軽い火傷を負った程度に考えていました。
ただ、火傷にしては「熱い!」と言う感じは全くなかったので何かおかしいとは思っていました。

さて、帰宅後ブユの恐ろしさを知ることとなります。
なんとなく赤く腫れていた場所が、帰宅後猛烈に痒くなってきます。
その痒さはどんなかゆみ止めも全く効かず、掻きむしってしまいあまりの痒さで寝られないほどです。
翌朝には患部は赤く大きく固く腫れ上がりました。しかも腫れたのと掻きむしった状態が混ざり、本当に悲惨な状態、例えるなら、何か悪い皮膚病にかかったような見た目です。

それでも、過去にブユに噛まれ、1週間ほどで治まった経験から今回もその程度だろうと軽く見ており、そうこうしているうちに数ヶ月経過してしまいました。
しかし、治るどころか痒みが収まる気配は全くありません。
いろんな市販の痒み止めを試しますが効果はありません。
さすがにあまりにも治りが悪いので皮膚科を受診することにしました。
そこで下された診断が、急性痒疹です。
ブユの毒が私の体質に合わなかったのに加え、放置していたため治りが極めて悪く慢性化してしまったようです。

皮膚科の通院では、液体窒素で冷却した脱脂綿を患部に数秒ずつ当てる液体窒素療法に加え、内服の痒み止め、副腎皮質ホルモン配合の軟膏、ドレニゾンテープと言う貼り薬が処方されました。
数ヶ月皮膚科の通院を続けたのですが、残念ながら劇的な回復は見られませんでした。
また、処方される飲み薬も軟膏も貼り薬にもそれなりの副作用が見られたので通院による治療は諦め、自然治癒に望みをかけます。
2年後、3年後と徐々に患部の見た目が良くなり、痒みもかなり改善されました。
今年で4年目に入ります。患部の痒みは殆どなくなり見た目もほぼ普通の状態にまで戻りました。

しかし、最初の方でも書きましたが20カ所ほど刺された患部の一部が、今でも何かの拍子で強い痒みをぶり返しますし、赤く腫れ上がることもあります。

愛妻が体験した緊急を要したブユの被害

こんな風にブユに対する注意喚起の記事を書いていても、先日愛妻がキャンプ場でブユの被害に遭いました。
左手の薬指が噛まれ、気がついたら徐々に腫れ始めていました。

最初はブユだとは思わなかったのですが、腫れ具合や、患部に明らかに噛み痕のような小さな穴が見られたことからブユだとわかりましたが、気付いたときにはすでに結婚指輪が抜けない状態になっていました。
このままではかなりマズいことになることは容易に想像できますが、どう頑張っても腫れた患部が邪魔をして指輪を外すことはできません。
そこで、帰宅後すぐに処置をしてもらえるよう現地から2時間ほどの自宅そばの消防署に電話をして相談したところ、リングカッターという指輪をカットする道具でカットしてもらえるけれど、患部の状態がわからず、腫れが進みもっと酷くなる可能性があることから、できるだけ早く近くの消防署へ行くよう勧められたので、近くの美作消防署へ駆け込みます。

金属アレルギーの関係で、指輪の素材はチタンなのですが、チタンという素材は非常に固くカッターの刃が負けてうまくカットできません。
隊員の方2人がかりで頑張っていただき、途中で新品の刃に交換するなどして何とかカットに成功しました。
消防署へ赴くのがもう少し遅かったら、指輪をカットするためのリングカッターが入り込む隙間すら無くなってしまい、かなり大がかりな処置が必要になったり、指先が重篤なうっ血を起こし本当に危険なことになったかもしれないとのことでした。

結婚指輪と言う事で、隊員の方がずいぶん気を遣ってくれました。

飛来するブユから身を守る

これも最初に書きましたが、ブユは水がきれいな場所でしか繁殖出来ないと言います。
水がきれいな場所は自然が豊かな場所です、つまりアウトドア好きが最も好む場所だとも言えます。
清流とブユはセットと言う事ですね。
また、ブユが活動する時間帯は主に朝方と夕方で、日中は活動しないとの情報もありますが、それは大きな間違いで特に湿度が高い日は、確実に一日中吸血活動します。
特効薬的な痒み止めは無いようですし、蚊取り線香はブユには全く効き目がありません。

森林香の様に、多くの煙で寄せ付けなくする方法もありますが、被害を防ぐ確実な方法はただ一つ、噛まれないようにする事です。
噛まれないようにするには、肌を露出させない事です。
ブユは黒や紺などの暗色を好み、白や黄色などの明るい色を嫌う傾向にあるので、明るい色の衣類を着用し、暑くても少なくとも特にブユの活動が活発になる朝夕は長袖と長ズボンで過ごしましょう。

また、足首など地面に近い場所を狙ってくるので靴下も必須です。
靴下は足首までのものではなく、なるべく長めのものが良いと思います。
ブユに効果があるという塗るタイプの虫除けもありますが、汗で薬剤が流れがちなのでこまめに何度も塗り直さないと効果が薄れ、そのわずかな場所を狙って襲ってきます。
ミント系の香りも苦手なようですが、それもこまめに何度も塗り直さなくてはいけません。
森林香という蚊取り線香に似たものも売られていますが、風が吹けば効果は激減しますし、森林香は強力な煙で害虫を寄せ付けなくするようですが、殺虫効果はありません。
私も持ち歩いているのですが、「ポイズンリムーバー」と言う患部の毒を抜き出す注射器のような道具もあります。

毒を吸い出すのですから、蛇や蜂などの毒にも効果がありますが、効果が高いのは噛まれた直後です。ブユに噛まれた事に気づくのは、たいてい患部が痒くなってからなので手遅れの場合が殆どです。

そうなると、噛まれないようにするためにはブユが発生する場所に近寄らないか、極力肌を露出させない事が一番確実で効果的な方法となります。

先日、「休暇村奥大山」に行き、ブユが非常に多いと評判の「鏡ヶ成キャンプ場」で一日過ごしてきました。
本当に自然が豊かで美しく、標高も900mほどあり涼しく過ごせる素晴らしいキャンプ場なので、仮にブユがたくさん出現しても行きたくなる場所なのです。
受付でもやはり、すでにブユの被害が出ていると注意を受けました。
それに加え、雨上がりのムシムシしたブユが最も好む一日でしたが、肌の露出を極力抑えて過ごしたところ、ブユの被害は全くありませんでした。奥さんは、食器を洗いに行ったときに洗い場で靴下の上部の肌が露出したところを一カ所やられちゃいました。

症状の強さには個人差があると思いますが、仮に軽く済んだとしてもブユは普通の虫刺されとは比較できないほどの症状が現れ、時として歩けなくなるほどの症状に見舞われることがあるので、ただの虫刺されと軽視せず、ブユ対策は万全にして出かけるようにして、少しでも異常を感じたら早めに皮膚科を受診することを強くお勧めします。

なお、キャンプ場などを利用する場合は予約時にブユの発生状況を確認しておくことをお勧めします。と言うのも、上記の通りブユは水のきれいな場所でしか繁殖出来ないので、通常ブユの被害がないキャンプ場でいきなり発生することは考えにくいからです。
その場合、通常の防虫対策のみで大丈夫だと思います。

残念ながらブユに噛まれてしまった場合どうするか?
対処法をまとめた記事はこちらから

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