強風や追い越される時の恐怖を無くせ

キャブコンは空気抵抗の塊

後部に大きな居住空間をもつキャブコンは、一般的な車両と比べ空気抵抗が大きいため、極めて燃費が悪く、そして風の影響を非常に強く受けます。
初めてキャブコンに乗って高速道路を走った人の多くは、大型トラックや高速バスに追い越されるときに、自分の車が左右に大きく振られて恐い思いをしたと思います。
また、追い越されるとき以外でも、強風が吹き荒れる高速道路や橋の上を走行するときなどにもハンドルが取られ風下に大きく流されてしまい、ヒヤリとした経験をお持ちの方も少なくないはずです。

ライトキャブコンのアミティに乗ってる私も、慣れるまでは本当に恐い思いをしましたし、舞鶴若狭道の海沿い敦賀線を走行中、トンネルを抜けたところで思わぬ突風に煽られ、大きく左側へハンドルを取られて危うく法面に乗り上げそうになった苦い経験があります。

居住性を重視するキャンピングカー(今回は特にキャブコンに限定した話になります)の多くは、空気を切り裂きながらの高速走行を前提としたスポーツカーと違い、空気抵抗のことは全くと言っていいくらい考慮されない形状をしています。
下図はスポーツカーを横から見た図ですが、空気の流れを大きく乱すことが無いため、車体は極めてスムーズに進んで行くことができます。

一方キャブコンの場合、まず垂直に近い車体前面に衝突して空気をせき止め、部分的に空気の流れる速度が0となる空気のよどみを生みます。
その圧縮された圧力の高い部分(下図の赤い部分)が、前へ進もうとする車体を後方へ押し戻そうとするだけでなく、大きく突き出したバンクヘッドの影響で下方向への流れも生みます。
さらに後方では剥離した空気の流れにより発生した激しい渦(乱気流)が、大きな負圧(下図の青い部分)を生みます。
負圧は車体を後方へ引き戻そうとし、これらの力は速度の二乗に比例して大きくなります。
また、アミティのように深いバンクを持つ車ほど、影響が大きいと考えられます。

このような目に見えない大きな空気の力により、キャブコンの燃費と安定性が損なわれてしまいます。

赤線で囲まれた部分で、空気の圧縮による後方へ押し戻す力が生まれる

車体の横振れの原因

キャンピングカーが大型車に追い越されるときや、横風に吹かれたときに大きく左右に振られるのは何故でしょうか?
あくまでも私の推測ですが、大型車に追い越される場合、追い越しが始まった時と追い越しが終わるとき(大型車の前方が運転席の横に来たあたりと、追い越しが終わった直後)に大きく振られる様に感じるので、おそらく追い越される時の風圧による圧力差が、車体を揺さぶる原因になっているのではないかと考えています。

もう少し詳しく説明するなら、大型車の追い越しが始まるときは、大型車が押し出した空気の塊が自車を反対側へ押し出し、追い越しが終わるときは後方の負圧の部分に引き寄せられるような力が働くので、追い越される時は2回にわけて逆方向に振られることになります。
大型車に追い越されている途中(横に並んでいるとき)は比較的安定していることからも、そのことの説明が付くと思います。

大型車が左右に押し出す空気の塊が、キャブコン前に溜まった空気の塊を一緒に押し出すので、圧力差がさらに大きくなり余計に振られるのではないかと思います。
横風の場合は大きな面積を持つシェルの側壁が、風圧の影響で風下へ押されることでも車両が振られます。

空気の流れに敏感な航空機の世界では

元々航空機好きの私は翼の構造などに興味を持っていたので、航空機主翼の前縁や、垂直安定板と水平安定板の間に付いている、空気の流れを良い方向に改善させるボルテックスジェネレーター(以後VG と表現)と言う小さな板や突起の存在を知っていましたので、これをキャブコンに使えないかと考えていました。
VGとはボルテックス(渦)ジェネレーター(発生器)の事で、装着することで後方に小さな渦を発生させます。
渦は小さくても非常にパワフルなので、周囲の乱れた空気を一緒に巻き込み後方へ流します。

ナセルチャイン

ジェット旅客機に乗ったことがある人は、エンジンカバー(エンジンナセル)に三角形の小さな板が付いているのに気付いた人もいると思いますが、これはナセルチャインと呼ばれ、ここで発生した強力な渦が周囲の乱れた空気を巻き込み、主翼上面へうまく流すことで翼の効率を高めています。
上記の写真は、ナセルチャインが作り出した渦の気圧差で生まれた雲のおかげで、空気の流れが見えています。

対策と走行テスト

バンクヘッドの前縁下部にVGを装着することで発生した渦が、上記写真のナセルチャインと同じように、バンクヘッド下の空気の塊を巻き込んで後方へ流してくれる事で、空気の塊が小さく(もしくは圧力が小さく)なり、その結果横振れも減るのではないかと考え、何でも売ってるAmazonで見つけて購入、早速取り付けてみました。

バンクヘッド下に写ってる複数の黒い三角形が取り付けたVGです。

数や取り付け方に特に決まりはありませんが、バラバラだとさすがに不格好なので、等間隔に目印を付けたマスキングテープを張り取り付けてみました。
運転席と助手席側にある2個は特に意味は無いのですが、追加の渦で補助的な効果を期待して付けました。

早速愛妻を同乗させ、近くのインターチェンジより高速道路に乗り、時速80キロでのテスト走行です。
いつもは追い越されるのは嫌なのですが今回は楽しみです。

走行車線を走っていると、後方から大型トラックやってきて早速追い越していきます。
「ん?今あまり揺れなかったよね?」
と愛妻に話しかけると
「そんな気がする」
と答えます。
そんな気がするだけで、1回じゃまだまだ断定できないので次を待ちます。

今度は大型観光バスが追い越していきます。
わずかに左右に振られるものの、やはり今までとは明らかに少ない揺れで、愛妻も同じ感想です。
3つめのICで高速を降り帰路は愛妻に運転してもらいます。
何台かの大型車に追い越されますが、全く振られなかったり、振られたとしても今までと比べたら全く振られないと言って良いくらい安定しているのが実感できました。
小さなVGの絶大な効果に驚きです。

また横風が強く、キャンピングカーが大きく揺れて怖いと、悪評の多い明石大橋や伊勢湾道でも、振られることが大幅に減り、極めて安定して走行することができるようになりました。

空力に詳しい友人の見解

かつてジェットエンジンに関わる仕事をしていた、空気力学のスペシャリストとも言えるキャンピングカー仲間に、VGを付けた愛車アミティを見てもらったところ、これは確実に効果があるとのお墨付きをもらいました、実は友人の愛車クレソンにはすでにVGが付いており、それどころか空力的に効果がありそうな色んな場所に自身で加工したプラダンを使ったテスト中の場所を見せてくれました。
さすがっす!
また、タフトと言う空気の流れを可視化する毛糸を使った手作りの道具を用意してくれ、サーキュレーターを使った実験を試みましたが、屋外だったため残念ながら風の影響が強く出て可視化はうまくいきませんでしたが、こう言う小道具を用意してくれるのもさすがっす!

タフトを使った実験

車両後方にもVG

バンク下のVGで味を占めたので、ほかの部分にも少し手を出してみました。
まずは、車両後端です。
車両の後端は最初の方で紹介した図の様に、大きな負圧に巻き込まれるように車両の直後に流れ込んだ乱れた空気が安定走行に悪影響を与えます。
そこで後端に取り付けたVGが発生させる、負圧に負けない強力な渦の力を利用して、空気の巻き込みをできるだけ後方に遠ざけることで、車両への影響を減らそうと言う考えです。

さて、その効果は・・・
バンク下にVGを付けたときほど劇的な変化は見られませんでしたが、それでも確実に直進安定性が良くなっているのを実感できました。
さらに味を占め、風切り音の減少を狙いアミティの窓枠にシリコン製の小さな粒を等間隔に並べ貼ってみました。
また、これも友人のアドバイスを受け、バンクヘッドの横側にもVGを付けてみました。

これらに関しては、正直効果の程は実感できていませんが、少なくともバンク左右に関しては形状が大きく変化する場所にVGを付けることで効果があると言う友人の意見の通りになっているはずです。空力とはそんなものです。

空力を意識した取り組み

友人の話によると、海外では頭でっかちの不格好なキャブコンを見ることはあまりなく、デュカトの様な、空力を意識した形状のものが多いそうです。
昨年(2025年)のキャンピングカーショーあたりから、ごく一部の車種でバンクヘッドの下に整流のためと思しきパーツを取り付けたキャブコンを見かけるようになってきました。

バンク下に空気の整流を目的としたと思しきパーツが取り付けられたRV TRUST社のTR550L Bolero-V.MAX

個人的にはここまで複雑な形状である必要性は無いように思います。

出典RV TRUSTさんのHP

キャンピングカーはシェルを乗せてる関係上、色んな場所で空気を巻き込む様な構造になっており、それが安定走行を妨げ燃費の悪化を招いています。
VGは空気にエネルギーを与えることで強力な渦を発生させますが、これは言い換えれば空気抵抗を増やすことにつながっています。
しかしながら、渦を発生させることで増える空気抵抗より、安定性や渦の力で変化した空気の流れにより空気抵抗が減るなど、メリットの方が大きいからこそ空気抵抗にシビアな航空機でも積極的に使用されているわけです。

あらゆる突起物を排除した滑らかなボディの航空機と比べ、エントランスドアや各格納部ドアのヒンジ、サイドオーニングなど、キャンピングカーには空気の流れを乱し、空気抵抗を増やして風切り音を発生させる突起が数多く取り付けられていますので、これらの形状を何とかすることで燃費や快適性はもっと向上するはずです。

ごくわずかの投資でVGがこれだけ絶大な効果を生むなら、試さない手はありませんが、走行中にパーツが落下しないよう、取り付け時に超強力なテープを使い、時々接着力を確認するなど十分注意するようにしてください。

ただ、白いボディに黒いVGを取り付けると、なんだかダサさ満載になるって感じるのは私だけでしょうか?白く塗装して目立たなくするのも良いかもしれませんね。
同様の話で、ゴルフボールの様に、車体表面に無数のディンプル(凹み)を設けることで、燃費が30%も向上したと言う海外のYouTube実験動画を見たことがありますが、なぜ自動車メーカーはこれを採用しないのか?
理由は、そんなえくぼだらけの車は誰も乗りたがらないと言うことで、納得できます。

VGやチャインのほかに、航空業界では空気の流れを変えることで空気抵抗を減らし燃費向上を狙った「ベーン」や「ストレーキ」などと呼ばれる物が使われますが、呼び名は違っても基本の原理は渦の力を利用したものです。
板の面で空気の流れを変えようとしたら、それは大きなものが必要になり別の弊害も生まれますが、渦を利用すると本当に小さなパーツで高い効果を生み出してくれます。

VGの燃費への貢献

航空業界におけるVGは、燃費の向上にも大きな役割を果たしていますが、キャンピングカーではどうでしょうか?
空気抵抗は速度の二乗に比例して大きくなると話しましたから、高速であるほどVGの効果も期待できますが、キャンピングカーのような低速走行車の場合、風洞実験など精密な測定ができれば、数値として効果を見ることができると思いますが、実感できるほどの効果はほとんどないと思います。
と言うのも、車の燃費は速度以外に重量、坂道の有無、加減速の頻度、風の有無、渋滞の有無、アクセルワーク、走行抵抗、エアコンの稼働状況、機械的な内部抵抗などに極めて大きく左右されるからです。
車の燃費に関しては「走り方を変えて、どこまで燃費を向上させられるか」と言う記事を過去に書いているので、よろしければそれも参考にしてみてください。

車や航空機以外での応用

スピードスケートの世界
1998年に開催された冬季長野オリンピックのスピードスケート競技では、スーツのフードや太腿にタービュレーターと呼ばれるジグザグのテープの様な物を取り付けている選手がいましたが、これもVGと同じ効果を狙った物です。
スピードスケートは滑走時のエネルギーの70%以上が空気抵抗に費やされると言われているので、タービュレーターを取り付ける事で発生する渦により、空気の巻き込みを後方に遠ざけ、空気抵抗の劇的な改善が見られたそうです。
近年はテープを貼るのではなく、スーツの生地を編み込むときに特定のパターンを配置することで同様の効果を狙っているようです。

自転車競技の世界
冬期長野オリンピックのさらに18年前、1980年に競技用自転車のひとつ、ロードバイクの世界でエアロブームと呼ばれる空気抵抗を減らす形状をした部品を取り付けた自転車が巷を騒がせました。
人間のパワーが同じであれば、空気抵抗を減らせばそれだけタイムが伸びるはずだというのが基本的な考えだったと思います。
これらの流行を作り出したのが、世界的な自転車部品のトップメーカー「シマノ工業」です。

シマノ工業は社内に本格的な風洞実験装置を導入し、AXシリーズと言う極力突起部を無くし、空気の流れを意識した実に薄っぺらいコンポーネントをラインナップさせ、カタログにも空気抵抗軽減率○○%と言う数字が並び始めました。
シマノのAXシリーズを機に、自転車の世界は一気にエアロブームに突入し、どこの自転車関連メーカーもブームに踊らされ、空力を意識した商品を発売します。


流線型のバッグまで登場するなど、高速走行とは全く縁のないツーリング車にまでエアロブームに巻き込みましたが、自転車部品の場合、人間を含めた全体の大きさと空気抵抗の割りには、エアロ形状の部品がもたらす恩恵が無視できるくらい小さかったのと、強度と性能を無視した商品は、あっという間に市場から消え、一時的な流行として終了してしまいました。

この様な新しい技術が大好きな私も、このAXシリーズのパーツを自分の自転車に取り付けましたが、もちろん恩恵が全く体感できないどころか、前後の変速機の反応の悪さ、ブレーキの効きのわるさ、ハンドルステムの強度不足による大きなたわみ、大きく踏み心地が変わったDDペダルなど、全てに於いてかなりガッカリした記憶がありますが、従来はむき出しだったブレーキをコントロールするワイヤーケーブルをハンドルバーにバーテープと一緒に巻き込む方法など、現在でもその名残は一部残っています。

また、当時は金属フレームが主流だったため、真円のパイプを多少涙滴型に加工することしかできなかったフレームですが、カーボンの成型技術が進化し安価に加工できる様になった昨今、極めて空力効果が高い綺麗な翼断面の一体構造で作られるようになり、その整流効果は抜群に高まり、特に高速回転により一番空気抵抗の影響を受けるホイールにも多用されるようになってからは、空力対策抜きには勝負に勝てないようになってきました。

まとめ

大気が存在する地球上では、物が移動するときに必ず空気抵抗が発生します。
速度の二乗に比例して大きくなる抵抗に適切な対処をすることで得られる恩恵は大きい物があるため、自転車界のような失敗例もありますが、決して軽視することはできません。
空気の流れは視覚化が難しいため、わかりにくい点もありますが、シェル下部からの空気の巻き込み、サイドオーニングやマックスファンなどの出っ張りなど、抵抗増大や風切り音の原因となりそうな場所はたくさんありますが、安価な材料を使い気軽に対策を試みることができるので、色んなパターンを試してみる価値はとても大きいと思います。

最後に

ここに記載したことは、風洞実験など綿密なテストを実施して得られた結果ではなく、あくまでも個人の経験と考えを元に試してみた私的感想なので、効果を保証することはできませんし、空気力学や流体力学に詳しい方から見ると正しくない表現があるかもしれません。
もしそういう点を発見された場合、優しくご教授いただけましたら幸いです。

cckota

コメント

  1. ニョキニョキニョッキ より:

    めちゃくちゃ参考になりました。

    とりあえずボルテックスジェネレーターはポチったのでつけてみます。

    自分のキャブコンも空気抵抗完全に無視して居室拡大を優先してる形なのでめちゃくちゃ不安定ですw

    ある方がバンクベッドのセリ出たオデコの裏に整流板をつけてめちゃくちゃ安定したって言ってました。

    • rin Hiroyuki rin Hiroyuki より:

      ニョキニョキニョッキさん、コメントありがとうございます。
      空気の流れって見えないからよく分かりませんよね、だけど空気の中を移動する時は必ず影響を受けますし、空気抵抗は速度の二乗に比例して大きくなるので本当に侮れません。
      記事はあくまでも個人的推測を基に書いてるので、正確性に欠ける箇所もあると思いますが、大きな間違いはないと思っています。
      これだけたくさんのキャンピングカーが流通している今、これからは燃費や走行時の安定性が求められてくる様にも思います。
      ボルテックスジェネレーターの様な小さな改良は対費用効果がとても大きいので個人で気軽に試すことができるので、ぜひ実験してみてください。

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