屋外活動の危険を考える

屋外活動で遭遇するいろんな危険

穏やかな河川の予告無き急激な増水

日本はきれいな河川が多く、キャンプ欲がそそられる河原がたくさん存在します。
そのため、SNSでも川のすぐそばにテントを張ったり、浅瀬の中に椅子やハンモックを持ち込んで涼んでいる様子を写した写真などがよく見られます。
それらを見ると、本当に気持ちよさそうでまねしたくなります。

日本では夏場はゲリラ豪雨、秋は台風が多発しますし、短くて流れが急な河川が多く、治水や発電を目的としたダムが数多くあります。
現在地は晴れていて川の流れが穏やかだったとしても、十数キロ離れた上流で降った急な豪雨が、わずか1時間ほどで自分の居る場所に押し寄せてくることも珍しくありません。
特に周りが見渡せない山間部の河原だと上流の様子などわかりません。
また、全国的に快晴だとしても上流にあるダムが放水することもあります。

それらが原因による川の増水の兆候が見えてからは、本当にあっという間に急激に水量が増え、1分もかからないうちに人が立っていられないような水量になる場合が少なくないので、兆候が見えてからの避難は不可能だと思った方が良いと思います。
ダムの放流時には、それを知らせるサイレンが鳴らされるため事前に兆候を知ることは出来ますが、キャンプ用品の撤収などが間に合わないことも十分考えられますし、そもそも放流のサイレンを聞き逃す場合も考えられます。
河原で草木が生い茂っている場所は、普段水に浸からない場所だから安全だと思う人も多いと思いますが、それでも過信は禁物です。

また、水の流れは想像以上に強く複雑で、水面は穏やかな流れに見えていても、実際は至る所で水中へ引きずり込む渦が発生しており、いったん引き込まれると上下が逆転して川底の岩で頭部をぶつけるなど、極めて危険な状態になります。
泳ぎに相当自信がある人でもライフベスト無しではかなりの高確率で溺れてしまいますから、かりに穏やかだとしても流れのある川では絶対に泳がないようにしましょう。
浅瀬であっても膝ほどの深さがあれば、大人でも油断すると簡単に転倒し流されます。
流され始めると立ち上がることは極めて困難になりますので、川遊びをするときはライフベストを着用し、浅瀬であっても絶対に子供たちから目を離すことがないように注意しましょう。

どんなに泳ぎに自信がある人でも、流されたり溺れたりしている人をライフベスト無しで救助することは極めて困難で危険な行為です。
また、ライフベストを着用している場合でも、流された人を救助することに特化したスローバッグなどの救助用のロープを備え、使い方を確認(出来れば実際に使ってみる)しておく事は極めて重要です。

YouTubeで「河川の増水」で検索すると、増水の怖さがよくわかる多くの動画がアップされているので、是非一度ご覧になることをお勧めします。
河川敷ではキャンプ場として管理がしっかりされている場所以外での、キャンプを含むレジャーは十分注意したいものです。

落雷

ゲリラ豪雨と言われる急激な豪雨が増えてきている近年、豪雨と落雷と突風はセットですので強烈な落雷にも十分な注意が必要です。
極めて危険な落雷から身を守るの記事にも記しましたが、ゴロゴロと言う雷鳴が聞こえなくても落雷に遭遇することはありますし、稲光が見えなくても雷鳴が聞こえた時点でその場所は雷の射程距離内ですので、安全で丈夫な建物への早めの避難が必要です。

落雷は瞬時に発生しますから、ストライクアラートなどの落雷を予知する機器を使うなどして、早めの避難が確実で一番効果的な唯一の方法です。
また、雷雲は激しい上昇気流によって急激に発達しますから、激しい突風で吹き飛ばされるテント、ペグ、ポールなどにも十分な注意が必要です。

ストライクアラート

火災、一酸化炭素中毒

寒い冬は空気が澄みキャンプ場が空いている上に、害虫や野生の動物も少なくなり、寒さ対策さえしっかりしていれば、とても快適なため、冬こそキャンプシーズンだという人も少なくありません。

最近は小型で高性能な薪ストーブが数多く見受けられます。
薪ストーブの暖かさは、他の暖房器具の比ではありませんが使い方を誤ると一酸化炭素中毒を起こしてしまいます。
薪ストーブの特性をよく理解して、不完全燃焼や煙の逆流などで中毒になったりしないよう注意しましょう。
また、薪ストーブは燃焼室はもちろん煙突も非常に高温になりますから、ストーブ下部の芝生や枯れ葉が燃えたり、テントと接触した部分からの自然発火による火災もありますので、設置方法や設置場所にも十分な注意が必要です。

薪ストーブに限らず、石油ストーブ、炭火、火を使うランタンも、十分な換気が確保できる状態で使いましょう。

テント内はもちろん、キャンピングカー内で火を使う場合は、一酸化炭素警報器や消化器をそばに置くよう心がけることも重要です。

野生の生物

車中泊をメインとしている場合は、テント泊している人と比べ、虫刺されなどに遭遇する機会は比較的少ないと思いますが、それでも自然が多い屋外での活動では虫に刺される機会が増えます。

アブ、ブユ(ブヨ、ブト)、スズメバチ、ヤマビル、マダニ、蚊、毛虫、蛇、熊、イノシシ、猿、鹿、狸、野良犬、クラゲ、ヒョウモンダコ、ウミヘビ、ウニ
など、不快であったり命に関わる危険な毒を持ったり感染症を引き起こす生き物や、うっかり遭遇してしまうだけで非常に危険な野生動物など屋外に生息する危険生物は多岐にわたります。

ヤマビルは吸血生物ですが、現時点ではヤマビルに噛まれた事による健康被害は無いようです。
ただ、私もそうですがあの姿に強い嫌悪感を抱く人は多いと思います。
乾燥に弱いので、雨天時や雨上がりに活発に行動します。
ヤマビルは木の上から人を狙って落ちてきて吸血すると思っている人も少なくないと思いますが、全てのヤマビルは地面から足を経由して、想像以上のスピードで這い上がってきます。
人間の体温や吐息に含まれている二酸化炭素に強く反応すると言われており、これは蚊やアブ、ブユなどの吸血生物と同じようです。
ヤマビル対策の基本は肌を露出させない事ですが、衣類のわずかな隙間からも侵入したり衣類の目が粗ければその隙間から頭を突っ込んで吸血することもあるため、ズボンの裾などは靴下の中に入れるなど、侵入に関してはかなり厳重な対策が必要です。
ヤマビルは足下から這い上がってくるので、濃度が20%以上の食塩水に浸した布を足首などに巻いたり、ヤマビル対策薬品を靴や靴下などにスプレーするのも効果的です。
対策薬品には「昼下がりのジョニー」や「ヤマビルファイター」などがあります。

危険な昆虫類の場合は、虫除けスプレー、虫除けの線香が主な対策ですが、一番効果的なのは肌を露出させない事です。
スズメバチは、7月から10月にかけて特に攻撃的になり、気付かずにうっかり巣に近づいただけで刺されてしまうこともあります。
香りの強い香水などにも過敏に反応します。
スズメバチに刺されたことによるアナフィラキシーショックなどでの死亡事故は、毎年ニュースになります。
むやみに山中に入り込んだりしないよう心がけ、万一遭遇してしまった場合は、慌てず静かにその場から離れるようにしましょう。

野生動物の場合、繁殖期を迎え子供がいるときは特に凶暴になりがちですし、冬眠を控えて食いだめのために活動が活発になる季節は遭遇する確率が高くなりますので、山に入るときは完全な対策ではありませんが熊よけのベルなどを携行することが望ましいでしょう。

毒蛇などの被害を避けるには、蛇が好んで生息する水場に近くじめじめしている草むらや茂みや藪の中を避けるようにします。
また、万一噛まれた場合、被害を最小限に防ぐ意味でもサンダルなど素肌を露出させる履き物は避け、丈夫な生地で出来たゆったりとした長ズボンを着用しましょう。

日本に限らず生命の源である海には、得体の知れない生き物がたくさん生息しており、猛毒をもつ生物も少なくありません。

海岸に打ち上げられたカツオノエボシも危険

猛毒のクラゲ「カツオノエボシ」「ハブクラゲ」噛まれると死に至ることもある「ヒョウモンダコ」「ウミヘビ」毒のとげを持つ「ゴンズイ」「ガンガゼ」「アカエイ」などは危険な海の代表格ですがそれでもごく一部です。
また、陸上と違い水中で人は自由に動くことが難しくなります。
見たことがない生物には近寄ったり触ったりしないことが極めて重要です。

ヒト

普段おとなしくても、時として豹変して人を襲うこともあります。
特にヒトは集団で行動すると、凶暴になることもあるため、万一身の危険を感じるようなことがあれば、躊躇せず警察に通報します。

ヒトが行っている迷惑行為を注意することで、逆恨みされる場合もあるので基本的に個人での注意などは避け、管理者に報告するのが一番の安全策です。

特に女性が単独でテント泊をする場合は、人と照明が少ない場所は避け、なるべく人の多いキャンプ場を選ぶなどの注意が必要です。
静かに過ごしたい気持ちは本当によくわかりますが、安全は何より最優先項目である事を忘れ無いようにしたいものです。
キャンピングカーを始め車中泊する場合、車内滞在中は必ず施錠を心がけるようにしましょう。
施錠は車中泊に限った事ではなく、日中のドライブでの仮眠時にも言える事です。

武術を学んでいる人であっても、危機に対して常に高い意識を持ち続け、万一の場合反射的に防御と反撃を行うために特化した特別な訓練を積んでいなければ、思わぬ危険から自身を守ることはなかなか難しいものですから、聞きかじったような護身術は全く意味がありません。
護身用の道具を持っていたとしても、それを使いこなす訓練をしていなければ何の役にも立たないどころか、相手を逆上させてしまいかえって被害が大きくなる事すらあります。

一番簡単で効果の高い危機管理は、危険だと思われる場所に近寄らない事です。
そして、危険な場所がどこにあるのかを見極める力を養うことはとても重要です。
「君子危うきに近寄らず」
これは、全ての危険に共通している身を守る一番の方法です。

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